食品の個別在庫管理とダイナミックプライシングを用いた販売による、サプライチェーン効率化と食品ロス削減の実証実験について

2023.02.07
コラム・インタビュー
食品の個別在庫管理とダイナミックプライシングを用いた販売による、サプライチェーン効率化と食品ロス削減の実証実験について

今村商事株式会社、株式会社サトー、西日本イシダ株式会社、株式会社日本総合研究所、株式会社まいづる百貨店は、商品一つ一つについて賞味・消費期限別に在庫管理しながら、ダイナミックプライシングによる売り切りを図り、そしてそれらによるサプライチェーンの効率化および食品ロス削減への効果を検証する実証実験を行います。

本実証実験は、経済産業省委託事業「令和4年度 流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(IoT技術を活用したサプライチェーンの効率化及び食品ロス削減の事例創出)」(注1)に採択され、2023年1月24日(火)から2023年2月26日(日)まで、佐賀県内で実施されます。

背景

国内で年間522万トン(令和2年度)が発生している食品ロスのうち、企業等が排出する事業系の食品ロスは約半分の275万トンに上ります(注2)。食品ロスは、仕入れが無駄になるばかりでなく、廃棄コストを発生させるなど利益を圧迫する大きな要因となっており、また、SDGs達成の観点からも、食品業界では重要な経営課題の一つとして削減に取り組んでいます。 

食品流通は、賞味・消費期限という時間の制約の下で行われるため、賞味・消費期限の情報に応じて活動を変化させることが、サプライチェーンの効率化と売り切り促進には欠かせません。

そこで最近では、商品一つ一つの在庫を賞味・消費期限別にITで管理し、在庫管理精度や発注精度を向上させることに大きな期待が寄せられるようになりました。また、賞味・消費期限に応じて価格を変更するダイナミックプラシングによって商品を効率的に売り切ることも、ITを活用することで可能となり、国内外で実証実験や実装が進んでいます。 

 

本実証実験について

本実証実験は、賞味・消費期限別の在庫管理とその情報に基づくダイナミックプライシングを活用した販売によって、サプライチェーンの効率化と食品ロスの削減を図り、その効果を測定するものです。 

商品には、入荷時に二次元バーコード(GS1 DataMatrix/注3)が印字されたラベルを貼り付け、ラベルの発行データを、ダイナミックプライシングの専用ツール「サトー・ダイナミック・プライシング・ソリューション(以下「SDPS」/注4)」に取り込むことで、賞味・消費期限別の在庫状況を可視化して管理します。SDPSは、あらかじめ設定された価格改定のルールに基づき、1日複数回、在庫状況を踏まえて自動で価格設定を行います。その際、同じ商品でも賞味・消費期限の差に合わせて、価格にも差を付けます。 

設定された価格は、電子棚札とPOSシステムに自動連携されます。消費者は、電子棚札に表示された賞味・消費期限別の金額を確認した上で、それぞれの賞味・消費期限を表すラベルが貼られた商品を選択し、その後、通常通りPOSレジで商品を購入します。 

なお、GS1 DataMatrixのPOSレジでの読み取りは、本実証実験が国内では初の導入事例となります。 

検証テーマ

賞味・消費期限別に商品を在庫管理し、その情報に基づくダイナミックプライシングを取り入れた販売を行うことによる、サプライチェーンの効率化と食品ロスの削減の効果を検証します。 

1. 小売店舗業務の効率化 
賞味・消費期限の迫った商品については、在庫状況も踏まえながら、あらかじめ設定された価格改定ルールに基づき、1日複数回、電子棚札上の価格表示を自動的に更新します。この方法で、棚札(値札)の差し換えや値引きラベルの貼り付け作業といったこれまで必要だった店舗業務の負担が、どの程度軽減されるかを検証します。 

2. 小売店舗における効果的・効率的な売り切り促進 
同一商品について、賞味・消費期限別に在庫を可視化した上で、それぞれ価格に差を付けたダイナミックプライシングを行います。販売期限に近づいていく商品に対し、人手を介さずに1日複数回の細かな値引きを実施することによって、効果的な売り切りが可能になるかを検証します。 

3. 食品メーカーにおける製造見込み数の精度向上 
特に賞味・消費期限が短い日配品の場合、食品メーカーでは、納品期限を守るために見込製造を行うことが慣習化しています。ここでは、期限別の売れ行き情報を食品メーカーに連携することで、見込製造の精度の向上を図り、食品ロスの削減がどの程度可能になるかを検証します。 

 

実施概要

実施場所: まいづるキャロット浜玉店(佐賀県唐津市) 
実施期間: 2023年1月24日(火)~2023年2月26日(日) 計34日間 
対象商品: パン25SKU 
実施主体: 今村商事、サトー、西日本イシダ、まいづる百貨店、日本総研 
協力先: GS1 Japan(流通システム開発センター)、SES IMAGOTAGジャパン、リョーユーパン、レイメイコンピュータ 

各社役割分担

【実施主体】
今村商事(本社: 東京都港区、代表取締役社長: 今村 修一郎)
・本実証実験のシステム設計支援と運用設計支援
サトー(本社: 東京都港区、代表取締役社長: 小沼 宏行)
・ダイナミックプライシングシステムの提供
・電子棚札の提供
・本実証実験の運用
西日本イシダ(本社: 福岡県福岡市、代表取締役社長: 新田 辰彦)
・POSシステムの改修
まいづる百貨店(本社: 佐賀県唐津市、代表取締役社長: 木下 修一)
・本実証実験の実施場所の提供
・本実証実験の運用
日本総研(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 谷崎 勝教)
・本実証実験の全体設計・推進・効果検証


【協力先】
GS1 Japan(流通システム開発センター)(所在地: 東京都港区、会長: 迎 陽一)
・GS1 DataMatrixの仕様に関する助言
SESIMAGOTAGジャパン(本社: 東京都中央区、代表取締役社長: Thierry Gadou)
・電子棚札システムの提供
リョーユーパン(本社: 福岡県大野城市、代表取締役社長: 安部 武彦)
・本実証実験の運用(商品の供給)
レイメイコンピュータ(所在地: 沖縄県那覇市、取締役社長: 知念 正和)
・ダイナミックプラシングシステムの改修

今後の予定

各参画企業は、本実証実験の結果を検証した上で、それぞれの分野から、サプライチェーンの効率化と食品ロスの一層の削減に役立つサービスの開発と社会実装に向けた活動を推進します。

(注1)令和4年度 流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(IoT技術を活用したサプライチェーンの効率化及び食品ロス削減の事例創出)

IoT技術やデータの活用によって、店舗運営やサプライチェーンを効率化させながら生産性の向上を図るとともに、新たな付加価値を創出していくことが、社会的な役割の大きい流通・物流業の持続可能な成長にとって重要となってきています。そうした中、本事業は、IoT技術やデータを活用することで、サプライチェーン全体の効率化や社会課題である食品ロス削減に資する事例を創出することを目的として行われます。

本事業を経済産業省より受託している日本総研は、本事業において食品製造業、小売業やその他協力企業各社とともに、上記背景および目的に基づき、令和4年度中に複数の実証実験を実施することを予定しています。

その一つである本実証実験は、サプライチェーンの効率化および事業系食品ロスの削減を目的に、生産・製造から流通・物流、そして販売までのプロセスを対象として実施します。

(注2)日本の食品ロスの状況(令和2年度)
https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/220609.html
※「日本の食品ロス量が推計開始以来、最少になりました」(農林水産省プレスリリース/2022年6月9日)より

(注3)GS1 DataMatrixの概要
GS1のアプリケーション識別子(AI: Application identifier)を利用して、データマトリックスと呼ばれる二次元バーコードシンボル体系で表現した国際標準のシンボル。GTIN、賞味・消費期限、ロット番号等の情報を持たせ、商品識別以上の情報を伝えることが可能であり、一部の国で先行導入が始まっている。国内でのGS1 DataMatrixのPOSレジでの読み取りは、本実証実験が初の導入事例となる。

(注4)サトー・ダイナミック・プライシング・ソリューション(SDPS)の概要
賞味・消費期限情報を持つ二次元バーコードラベルを商品に貼り付けることで、これまでのSKU単位ではなく、SKU×賞味・消費期限単位での在庫管理を可能とする仕組み。電子棚札を利用し期限別在庫情報に応じた価格表示の実現により、価格更新のための棚札の差替え作業や値引きのための値引きラベルの貼付作業が不要となる他、従来の20%や40%といった値引きを期限直前に一律で行うのではなく、より細かい割引率で何度でも価格変更をすることが可能となる。データの蓄積が進んだ段階で、AIを活用した自動の価格設定機能の追加も想定している。
紹介動画: https://vimeo.com/655216349/fd17780bc2

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