社用携帯の紛失・破損時の弁償金は最大50%?対処法も解説
業務を円滑に行うため、従業員に携帯電話を貸与する会社は少なくありません。
社用携帯は会社や顧客に関する重要な情報が多く保存されているため、危機管理の徹底が必要です。
しかし、紛失の危険性は身近に潜んでいます。
実際に社用携帯を紛失・破損した場合、従業員へ弁償や損害賠償は求められるのでしょうか。
本記事では、社用携帯の紛失が発生した場合の弁償について詳しく解説していきます。
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社用(会社)携帯の紛失や破損が発生した場合は従業員に弁償させられる?
会社の貸与品を紛失や破損が発生した場合、会社側は紛失した従業員本人に弁償を求められる可能性が高いです。
ただし、必ずしも弁償が発生するとは限らず、状況や会社によって対応が異なります。
ここでは、社用携帯を紛失した際に弁償を求められる可能性について解説します。
社用携帯紛失時の弁償の有無や金額は就業規則によって異なる
社用携帯を紛失した際の弁償の有無や金額は、基本的に各会社の就業規則に沿って決定されます。
就業規則に「故意や過失によって会社に損害を与えた場合、その損害賠償を請求することがある」などの記載があれば、紛失した備品の弁償を求められる可能性が高いです。
一方で、具体的な対応が記載されていない場合は、個別のケースに応じて判断しなければなりません。
まずは自社の就業規則を確認し、紛失時の対応や弁償に関する記載があるかを把握しておきましょう。
社用携帯紛失時の過失割合や故意の有無が弁償に影響する
弁償金額は、紛失した従業員の過失割合や故意の有無によって変動することがあります。
たとえば、飲み会で泥酔するといったように、紛失リスクが高い状況下であれば「過失が大きい」と判断される可能性が高まります。
さらに、不正行為の証拠隠滅や個人的な利益目的による売却など、故意に紛失したことが明らかになった場合、より厳しい対応を取る必要性が出てくるかもしれません。
過失や故意の度合いが高いほど、弁償金額が高くなったり、処分が重くなったりする可能性があります。
状況によっては弁償を求めないケースもある
紛失時の状況によっては、従業員に弁償を求めないケースもあります。
業務中に予期しない事故が発生して紛失や破損が生じた場合、従業員に過失がないと判断される場合があります。
この場合、会社側は従業員に弁償を要求できない場合もあるでしょう。
また、会社の管理体制や業務環境に問題があり、紛失や破損が発生しやすい状況であった場合、会社側にも責任があると考えられます。
このように、状況次第で弁償の有無が異なる点は覚えておくとよいでしょう。
なお、会社が社用携帯紛失時の保険に加入している場合は、従業員に弁償を求める必要がないこともあります。
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社用(会社)携帯の紛失が起きた際の弁償金はどのくらい?
労働基準法第16条において「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。 」と定められています。
つまり、あらかじめ就業規則で賠償金額を定めることはできません。
それでは、社用携帯の紛失を起こした従業員に弁償を求める場合、実際にはどの程度の金額が弁償金として適切なのでしょうか。
ここでは、社用携帯を紛失時の弁償金を、どのような基準で決定するべきかを解説します。
社用携帯の25%~50%が弁償金の目安
社用携帯の紛失や破損が発生した場合、一般的には「新規携帯購入価格の25%~50%」が弁償金額の適当範囲とされています。
その理由に、以下のものがあります。
- 減価償却を考慮(使用期間や紛失した社用携帯の時価相当額など)
- 紛失した従業員の過失割合や故意の有無
- 会社側への一定の責任(労働過程で発生する損害のため)
- 過去の判例に基づく負担割合の制限など
紛失した社用携帯が会社からの貸与品であっても、上記の理由から紛失者に全額弁償させるのは難しいです。
請求できる弁償金額の目安は、携帯代金の25%~50%程度と考えておきましょう。
機密情報が漏洩した場合は損害賠償・慰謝料が発生することも
社用携帯の紛失や破損に対する弁償金は、25%~50%が目安です。
ただし、紛失した社用携帯の中に顧客や取引先企業の機密情報が保存されていた場合、損害賠償を請求できる可能性があります。
過去の判例では、氏名・住所・電話番号など一般的な連絡先情報の流出の場合、慰謝料の相場が1人当たり3,000円~5,000円となるケースがありました。
ほかにも、センシティブな情報を含んでいる、二次被害が出ているといったケースでは、1人当たり3万5,000円の損害賠償金を支払うことなった判例もあります。
このように、情報漏洩によって会社側は多大な損害を被る可能性も否めません。
紛失した従業員に損害賠償金や慰謝料の一部を求める場合、漏洩した情報の機密性、実害の有無を考慮する必要があります。
弁護士や専門家を交えて慎重に検討すれば、適正な金額を算出できるでしょう。
社用(会社)携帯紛失の弁償金を給与から天引きすることは原則不可
仮に社用携帯の紛失や破損が発生した場合も、会社側が一方的に弁償金を給与から相殺・天引きすることは、原則認められません。
これは労働基準法第24条で、賃金の全額を支払うことが原則とされているためです。
ただし、労使協定(24協定)に規定されている、会社と紛失した本人両者の同意があるなどの場合は、天引きが可能となるケースもあります。
弁償金を従業員に求める場合、給与天引きではなく別途請求するのが望ましいです。
弁償金額が高額になる場合は、従業員と話し合い、分割払いを提案しましょう。
従業員の負担を軽減しつつ、弁償金の回収を確実に進められます。
社用(会社)携帯の紛失・破損による弁償以外の処分
ここでは、社用携帯紛失による弁償以外に、どのような懲戒処分が考えられるかを解説します。
始末書や厳重注意などの軽い処分
社用携帯の紛失・破損が発生した場合、弁償の有無に関わらず、始末書や厳重注意などのけん責が発生する可能性が高いです。
始末書を提出させる目的は、事実確認と紛失した従業員の反省・謝罪、紛失を繰り返さないための対応策を考えることです。
始末書には謝罪と紛失時の状況報告を、正確・詳細に記載する必要があります。
- 宛先(上司や社長など)
- 表題(「始末書」と記載)
- 提出日時
- 自分の所属先と氏名
- 社用携帯を紛失したことへの謝罪文
- 紛失の内容・原因・現状
- 今後の対策
- 反省の意思
会社独自のフォーマットを用意していない場合は、主に上記の内容を記載してもらえば問題ないでしょう。
減給や降格などの重い処分
就業規則の規定によっては、減給や降格など重い懲戒処分を課す必要があるでしょう。
考えられる処分内容としては、以下があげられます。
- 同様の過失を繰り返す
- 故意による紛失
- 機密情報の漏洩
- ビジネス機会の損失
- 信用低下
ただし、減給処分の場合は労働基準法第91条にて以下の内容が定められています。
その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
たとえば月給30万円の従業員の場合、1日の平均賃金は1万円です。
1回の不祥事に対し、その半額の5,000円を超えた減給処分はできないこととなります。
また、複数回問題を繰り返した場合であっても、1ヶ月で総額3万円を超える減給処分はできません。
社用(会社)携帯の紛失が起きた場合の対応方法
従業員から社用携帯を紛失した報告を受けた際は、まず紛失した従業員に聞き取りを行いましょう。
紛失時の日時や場所、状況、紛失した携帯に保存されていたデータなど、正確な情報を把握します。
その後、契約している携帯電話会社に社用携帯の紛失を報告してください。
法人携帯として契約している場合、端末のリモートロックやGPSでの位置情報が確認できる場合があります。
また、紛失した携帯を迅速に見つけるためにも、警察へ「遺失届」を提出しましょう。
紛失した場所に心当たりがある場合は、その施設の管理者などへ連絡することも重要です。
紛失した社用携帯に個人情報や機密情報が含まれている場合、関係先へ速やかに報告しましょう。
報告前に情報流出が明るみに出た場合は、信用問題に関わります。
大手企業など関係先が多数いる場合、情報開示や謝罪文の掲載が必要な場合もあるため、慎重に対応しなければなりません。
関連記事:従業員が社用携帯を紛失!考えられるリスク・対応方法と紛失対策について徹底解説!
社用(会社)携帯の紛失が起こる原因と考えられるリスク
ここでは社用携帯の紛失が起こる主な原因と、紛失によって考えられるリスクについて解説します。
社用携帯の紛失が起こる主な原因
社用携帯を紛失する原因に、以下の状況が考えられます。
- 外出先での紛失
- 使用後の置き忘れ
- 盗難被害
- 泥酔などにより記憶が欠乏している状況
「ポケットに携帯を入れていたのに、気づいたら無くなっていた」「飲食店での打ち合わせ時に携帯をテーブルに置き、そのまま店をあとにした」などは、誰にでも起こり得る事例でしょう。
また、少し目を離した隙に置いていた荷物や携帯電話が盗まれることもあります。
社用携帯を所持した状態で飲酒し、外出先で記憶が曖昧になったり欠落したりするなどで、気づかないうちに紛失してしまうかもしれません。
社外での紛失に関しては、定期的な注意喚起をしておくとよいでしょう。
社用携帯の紛失によって考えられるリスク
社用携帯を紛失した場合、次のリスクが考えられます。
- 個人情報の漏洩
- 企業の機密情報の漏洩
- 会社の信用問題
社用携帯には、顧客や企業のさまざまな情報が保存されています。
紛失による情報流出によって、顧客情報が悪用される、競合他社にデータを奪われる可能性もあるでしょう。
また、紛失による情報流出の不安や管理体制のずさんさが表面化すると、会社の信用低下にもつながりかねません。
大企業の場合、社会問題に発展する可能性もあります。
社用携帯紛失によるリスクを従業員に周知し、教育を徹底することが大切です。
社用(会社)携帯の紛失は決してレアなケースではない
社用携帯の紛失は決して珍しい事例ではありません。
警視庁が発表している遺失物取扱状況では、令和6年の携帯電話の拾得物は14万7,049件発生していました。
その内の約16%は持ち主が見つからず廃棄、または犯罪に使用されたとして任意提出されています。
警察に届け出がないものも含めると、携帯電話を落とした事例はさらに多いでしょう。
また、あるアンケート調査によると、リモートワーク中に業務関連備品の置き忘れや紛失を、52.2%が経験しています。
さらに、リモートワーク中における備品の紛失を、約87%が会社に報告していませんでした。
社用携帯の紛失は誰にでも起こる可能性が高いだけでなく、紛失状況の把握が遅れる可能性もあります。
社用(会社)携帯の紛失対策ならMDM(モバイルデバイス管理)がおすすめ
MDM(Mobile Device Management)とは、ビジネス利用のモバイルデバイスを管理するシステムを指します。
ここでは、紛失対策としてMDMを導入するメリット見ていきましょう。
関連記事:MDM(モバイルデバイス管理)とは?できることや導入メリットをわかりやすく解説!
社用携帯のリモート制御が可能
MDMにはリモート制御機能があり、紛失時のセキュリティ保護が可能です。
たとえば位置情報管理機能では、GPSで位置情報を取得・管理します。
従業員が紛失した場所に心当たりがない場合でも、社用携帯の現在位置を把握できます。
また、遠隔操作機能では、リモートロック・リモートワイプが可能です。
リモートロックで端末機能の操作を不能にさせ、リモートワイプではデータ削除や端末の初期化ができます。
社用携帯に保存されている機密情報の流出や不正利用の恐れがあっても、情報漏洩対策が速やかに行えます。
これらの機能を活用することで、社用携帯を紛失した場合でも被害を最小限に抑えられるでしょう。
デバイスに搭載された機能を一元管理できる
MDMの機能を活用することで、デバイス搭載機能を一元的に管理できます。
たとえばWi-FiやBluetooth、カメラなど端末機能の利用を制限することで、私的利用や情報漏洩の防止も可能です。
MDMによる使用端末の利用状況把握や機能制限で、利用する従業員のモラルだけに頼らず、社内ルール、セキュリティポリシーを遵守した使用を徹底できるでしょう。
コネクシオの「マネージドモバイルサービス」では、端末提供から運用代行までワンストップでの対応が可能です。
社用携帯の紛失・故障対応やセキュリティポリシー策定など、企業様の課題に合わせて最適なプランニングを提案いたします。
社用携帯を紛失してしまった際、端末が悪用されるリスクは可能な限り軽減すべきです。
「マネージドモバイルサービス」を導入していれば位置情報の確認や端末の動作停止、情報の初期化などにも対応できます。
社用携帯を安全に利用したいのであれば、ぜひ導入を検討してみてください。
マネージドモバイルサービスについて詳しくはこちら
社用携帯の紛失が発生した場合、弁償させられるかは状況により異なる
本記事では、社用携帯紛失時の弁償対応について解説しました。
社用携帯を使用する従業員一人ひとりが紛失のリスクを考える、会社側が紛失を未然に防ぐための管理体制を徹底するなどで、紛失時の弁償問題を回避できます。
また、社用携帯には会社の重要データが含まれていることを、会社側も従業員側も改めて認識しましょう。
コネクシオでは社用携帯の紛失時に備えた対策や運用を支援しています。
MDMを導入した紛失時のリスク対策を考えている企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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