持続可能な働き方ABWとは?
ウィズコロナ時代に突入し、働き方や働く場所は企業によって様々な選択肢が取られ始めています。

テレワークを推進し在宅勤務をはじめ、場所を問わずにオンラインでの就業管理を基本とする企業が増える一方で、在宅勤務を禁止したテスラを筆頭に、Googleやホンダ、東芝など、在宅勤務を縮小する動きも加速しています。

そもそも、働き方の正解はなく、業態や部署によって生産性の高いワークスタイルやワークプレイスは異なるため、最適解に向けて頭を悩ませている経営者や人事も多いことでしょう。

今回は多様化する働き方の選択肢として、従業員の満足度を保ちつつ業務生産性を向上させるニューノーマルな働き方の概念「ABW」について解説します。

目次

ABW(Activity Beased Working)とは?

ABW(Activity Beased Working)とは?

ABWとは “Activity Based Working” の頭文字をつなげた造語で、時間や場所に縛られずに働けるワークスタイルを指す言葉です。

従来の就業を考えてみると、大半の企業では固定のオフィスへと物理的に通勤し、そこで就業するというスタイルでした。

それに対してABWでは、個人やチームが置かれた状況等に応じて柔軟に働く場所と時間を選択することができるワークスタイルとなります。一人で集中し作業したいときは在宅勤務やコワーキングスペースにあるワーキングブースで働き、チームでブレストをしたい場合はオフィスの中規模会議室で実施して、メールの返信などの雑務はカフェラウンジで行う。

そんな働き方を推奨するのがABWというわけです。

ABWは個々の裁量を最大化する働き方

このABWのコンセプトが最初に提唱されたのは、40年近く前の1985年です。ハーバード・ビジネス・レビューに「Your office is where are」と呼ばれる論文が掲載され、そこで統合的ワークプレイス戦略の概要が語られたのです。

それから5年後、この論文で提唱された働き方を「ABW」としてパッケージングし、1990年より導入支援サービスを展開しているのがオランダのVeldhoen+Company社(以下、ヴェルデホーエン社)です。同社では、クライアントのABW戦略の策定はもちろん、ボードメンバーを含む全従業員向けのリーダーシッププログラムや物理的環境のコンサルティングなど、様々な観点でワークプレイスの戦略的な活用を推進してきました。

文字通り、従業員が個々の活動(Activity)によって自律的に働く場を選択し、それにふさわしい場を企業が用意するという意味で、一人ひとりの裁量を最大化する働き方と言えます。

その先進性と重要性を認識し、ABWは現在、ヴェルデホーエン社のクライアントはもちろん、多くの海外企業が導入している仕組みとなっています。

フリーアドレスやリモートワークとの違い

ABWとよく間違われるのが、フリーアドレスやリモートワークです。

フリーアドレスはオフィスの執務スペース内であれば自由に働く場所を選べる制度を指します。つまり、あくまでオフィスという物理空間内での自由度を担保する就業制度となります。

またリモートワークは、在宅や外出先など、働く「場所」を自由に選べる制度を指します。オフィスはもちろん、自宅やコワーキングスペースなど、働くのに適した様々な場所と連携していくことになります。

これに対してABWは、場所のみならず時間も含めて、社内外問わず、働く人の活動に応じて好きな場所で働ける制度を指します。

前述のヴェルデホーエン社によると、ABWは企業の経営戦略を実行するためのツールの一つであって、画一的な働き方を定義するものではないとのこと。つまり、ABWは企業によってそのあり方がまちまちだということです。

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ABWの考えに基づく10の活動とオフィスの在り方

ABWの考えに基づく10の活動とオフィスの在り方

次に、ヴェルデホーエン社によるABWの考えに基づく10の活動をご紹介します。

従業員の10の活動

たとえばヴェルデホーエン社と協業パートナー契約を締結している株式会社イトーキでは、以下のとおり、ワーカーの作業を10に大別できると定義しています。

1人 高集中 中断されることのない高いレベルの集中が求められる個人作業。
コワーク 短い会話や質問などを交えメンバーと場を共有しながら行う個人作業。
電話/WEB会議 物理的には一人で行う、バーチャル上でのコラボレーション。
2人 二人作業 二人が近距離で横並びになり、じっくりと行う作業。
対話 二人もしくは三人で行う議論や会話。予約でも突然でも良い。
3人 アイデア出し 新たな知識やプロセスを構築するために行う三人以上の協働活動。
情報整理 計画の進捗を整理・議論するための、三人以上の計画された会議。
知識共有 三人以上のグループによる知識共有。主にプレゼンターが話す。
その他 リチャージ 仕事から隔絶し、チャージや心身の切り替えを行う。
専門作業 特別な設備を必要とする専門的な業務。
ユーザー
登録
管理者登録ユーザーのみ 個人で自由に登録可能
利用料金 ・無料(ユーザー数100人まで)
・有料(月額450円~/人)
無料

※イトーキホームページ内「ABWコンサルティングサービス」の「働く場所は活動から選ぶABWの考え方に基づく「10の活動」」を参照の上再作成

こちらはあくまでイトーキが定義した10の活動の分類と説明ですが、現在は様々な企業がABWを提供しており、この10の活動は企業によっても異なるので、念のためご注意ください。

活動に合わせたオフィス機能が必要

たとえば1人で高集中(集中作業)したい場合は、「中断されることのない高いレベルの集中が求められる個人作業」を行うのに適した空間として、個室の作業スペースやWeb会議用のスペース等が必要となります。

また二人作業(2人での共同作業)を行いたい場合は、「二人が近距離で横並びになり、じっくりと行う作業」を行うのに適した空間として、1on1や1to1がやりやすい小中規模のスペースを探すべきです。

さらに、リチャージ(リフレッシュ)をしたい場合は、「仕事から隔絶し、チャージや心身の切り替えを行う」場所が用意されるべきです。よって、ベンチャー企業に置いてある卓球台や、人をダメにするクッションなどは、このリチャージをするために必要なツールだということがわかります。

このように、10の活動それぞれに合わせたオフィス機能が必要だという考え方になります。

ABWのメリットとデメリット

ABWのメリットとデメリット

次に、ABWのメリット・デメリット(課題)について見ていきましょう。

ABW導入のメリット

ABW導入のメリットは大きく3つあります。

業務効率・生産性の向上

ABWを導入すると、各活動に最適化された場が用意されることになるので、業務効率や生産性が向上します。その際に、評価制度の見直しも重要です。成果を適切に評価する制度があって初めて、人は「生産性をあげたい」「業務効率をあげたい」と考えるようになり、ABWの恩恵を十分に享受できるようになります。

従業員満足度の向上

ABWは従業員満足度の向上にも寄与します。働く場所や時間を、従業員自身がある程度自由にデザインすることができるので、コアタイムに特定の場所(オフィスなど)にいる必要があるなどの不要なストレスから解放され、ワークライフバランスにも良い影響を与えます。

また、テレワークで孤立化していた従業員とのコミュニケーション課題などについても、2人以上のワークやリチャージ等に向けた場を用意することで、ある程度解消することが期待できます。

サステナブルなワークスタイルと働く場の実現

このように、在宅勤務やテレワーク、フリーアドレス、コワーキングスペースなど様々な働き方を従業員が選択できることで、不測の事態にも対応しやすく、事業全体がサステナブルな形へと昇華することが期待できます。

ABM導入の課題

一方で、ABW導入には課題もあります。

一定のコストと時間が必要

ABWを導入するには、一定のコストと時間がどうしてもかかります。様々な場所での就業を実現するためのネットワーク整備や、オフィスの最適化に向けたレイアウト変更のための工事費用、煩雑な手続きをせずに会議室やワーキングブースを活用できるような予約システム等、理想を追うほどに費用がかかります。

ABW導入には、様々な導入施策の優先順位づけが必須だと言えるでしょう。

労務管理、セキュリティの課題

働く場所が自由になると、その分、労務やセキュリティの管理が煩雑になります。

前者については、オンライン出退勤ツールなどを活用してある程度の労務状況を把握できますが、仕事とプライベートの区別がつきにくい在宅勤務の場合は、厳密な管理がより困難となります。

またセキュリティについても、たとえばシャドーIT(会社が把握していない形で従業員が業務利用するデバイスやクラウドサービス等)が横行するリスクがあるので、その対策が不可欠だと言えます。それに付随して、セキュリティ教育も必須になるでしょう。

ABW導入のポイント

ABW導入のポイント

最後に、ABW導入に向けたポイントを4ステップに分けてご紹介します。

従業員の働き方やオフィスの状況を把握する

従業員がどのように働いているか、オフィスはどのような活用をされているか、不満はどこにあるのか。

就業時間や会議室等のスペース利用歴といった定量データと、従業員へのヒアリングなどの定性データを収集し、現状のワークスタイルを正確に把握することが第一歩です。

ABW導入の目的を定める

その上で、ABWの目的を明確に定めましょう。KPIの設定と同様、定量的にどうなっているべきかを定めることが大切です。

よく「最近多くの企業がABWを導入しているからうちも」という形で、外的要因だけをきっかけに導入を進めようとするケースがありますが、手段が目的化してしまうと費用対効果が見合わなくなる恐れがあるため、自社の状態に即した目的の設置が不可欠です。

オフィスの機能と制度設計の見直し

ABW導入の目的が定まったら、今度は具体的なオフィス機能と制度設計の見直しを進めましょう。特に後者について、先ほどもお伝えしたとおり成果で評価する基準をデザインすることが重要です。

レイアウトの検討

オフィスの機能と制度設計の見直しが完了したら、最後にオフィスなどの物理空間における具体的なレイアウトを検討しましょう。どのような空間にすれば、先述した10の活動をスムーズにデザインできるか。そのような観点で検討を進めましょう。

まずは専門のコンサルタントに相談しましょう

今回は、ウィズコロナ時代に注目されるABWについて解説しました。ABWは何か一つの画一的な正解がある手段ではなく、企業の数だけ正解が異なる働き方の概念です。そのため、自社にフィットする働き方や場も千差万別です。

まだまだ新しい概念なので、まずは専門のコンサルタントに相談してみることをオススメします。

コネクシオでは、自社での実践に裏打ちされたABWのノウハウやコンサルソリューションをご用意しているので、ABWの進め方等でお困りの場合はぜひお気軽にご相談ください。

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