少数、あるいは1人の情シス自体が必ずしも問題であるわけではなく、たとえば従業員数自体がごく少数の場合は担当する業務量も少ないため大きな負担とはなりません。問題なのは、従業員数が50名あるいは100名を超える規模の企業であっても情シスの人手不足が生じていることです。
なぜ企業規模が大きくなっても情シスが足りないのか、主な理由は次の4つが考えられます。
情シス担当者が定着しない
1つ目の理由として情シス担当者の早期離職があげられます。企業は余裕をもった数の担当者を配置したいと考えていても、人材が定着せず結果的に情シス担当が少数あるいは1人になるパターンです。
情シス担当者が定着しない大きな理由は、現状の少数体制を脱却できていないことにあります。情シス担当者が少ないと1人が抱える業務量が多く激務となるため、離職が起こりやすい状況です。そのなかで現担当者の離職が決まってから新たに採用しても、結果的に1人にかかる業務量は変わりません。
「激務→離職→採用→激務→離職」と同じ状況を繰り返す悪循環が続いている状態です。
専門知識を要する人材を採用できない
2つ目の理由は、情シス業務を問題なくこなせる専門知識を有する人材が採用できない点です。従業員数が少ない企業の場合、情シス部門を設けず従業員の中でICTに詳しい人物が通常業務と兼任しているケースが見られます。
ただし情シス業務を専門的に行ってきた人材に比べると知識も経験も不足しているため、工数が多くかかったり適切な運用ができていなかったりと問題が生じやすくなります。
問題が起きてから情シスを専門的に担ってきた人材を採用しようと思っても、専門スキルをもった人材はそう多くありません。とくに規模の小さい企業ではなかなか応募がなかったり、入社までいたらなかったりする場合もあるでしょう。結果的に既存の情シス担当者の業務負荷が長期にわたって増えることになるのです。
情シス、デジタルリテラシーに対する経営層の理解不足
第3の理由は、経営層やマネジメント層の情シス、デジタル活用に対する理解不足です。情シス業務はその性質上、成果が可視化されにくいため、IT知識に明るくない第三者からは激務と無縁の部門だと誤解されることがあります。
そのため経営層や他部門から工数を理解しないまま新たな業務を依頼されることも多く、情シス担当者は限られたスケジュールのなか、テスト不足の状態で不完全なシステムを運用せざるを得ない場合も。
不完全なシステムの運用でトラブルが生じても、利用する従業員側に対処できる人材がいなければ問題が深刻になるまで放置されやすく、セキュリティや機密情報の漏洩に発展しかねません。
このようなトラブルが生じても、経営層が情シス業務に対して十分に理解できていない企業では工数問題や人材不足に目が向けられず、担当者の実力不足や注意不足で済まされてしまい、新たな人材の確保など環境改善に至らないことが大半です。
情シスやIT人材の枯渇
情シスに限らず、日本の一般的なイメージとしてITに関わる仕事は激務だと認識されている傾向にあります。そのため企業側が採用計画を立てたとしても、募集に対して応募が集まりにくい状態です。またDXが推進している今、専門的なIT人材は一部大企業に集中し、その報酬も高騰しているため、売り手市場となっています。
IT業界は日々めざましい進化を遂げていることから、長時間勉強して身につけた知識が、現場では既に古いものとなっているパターンも少なくありません。
常に新しい情報や知識を獲得し続けなくてはならない一方で、一般企業に入社すれば長時間労働や1人での情シスなど過酷な職場環境が待ち構えているというイメージもあり、キャリアビジョンも描きにくいことから中小の一般企業が優秀な人材を獲得するのは難しい環境となっています。