EDRとゼロトラストの違いは?セキュリティへの必要性を解説

リモートワークの普及にともない、従来の境界型セキュリティだけでは防ぎきれないサイバー脅威への対応に悩む企業が増加しています。
経営層へ新たなセキュリティ体制の必要性を十分に説明できず、実際の導入へ踏み切れないケースも少なくありません。
複雑化するサイバー攻撃から自社の情報資産を守るには、すべてのアクセスを信頼しない「ゼロトラスト」の思想に基づくセキュリティ対策が必要です。その具体的な手段として、今「EDR」の導入と運用体制の構築が注目されています。
本記事では、ゼロトラストの基本概念や従来の防御との違いから、EDRの具体的な仕組み・役割までを詳しく解説します。
ゼロトラストとEDRの基本的な関係性を把握し、自社に最適なセキュリティ環境の実現を目指しましょう。
EDRとゼロトラストの違いとは?

EDRとは、サーバーやパソコンなどのエンドポイント上で、脅威検知と事後対応を担うセキュリティ技術を指します。
一方、ゼロトラストは、企業全体のアクセス制御と信頼の前提を根本から見直すセキュリティの思想や設計です。
EDRとゼロトラストは、それぞれ役割が異なります。
EDRとゼロトラストの違いについて、次の比較表を参考に整理しましょう。
項目 | EDR | ゼロトラスト |
|---|---|---|
主な対象 | エンドポイント(端末) | 企業システム全体(ID・端末・ネットワークなど) |
役割・目的 | 脅威の検知・事後対応・端末の保護 | 信頼を前提としない厳格なアクセス制御・設計・思想 |
アプローチ | 端末の行動監視とインシデント調査・復旧 | リソース単位での認証・認可と継続的な検証 |
米国政府機関であるNIST(米国国立標準技術研究所)の資料でも、EDRは端末の状態や挙動を可視化し、アクセスの可否を判断するための情報を提供する仕組みのひとつとして位置づけられています。
ゼロトラストとは
本章では、ゼロトラストの概念や幅広く普及した背景について、セキュリティ担当者向けの基礎知識をわかりやすく整理します。
ゼロトラストを単なる流行り言葉として片付けず、自社の課題解決に直結する重要な仕組みの全体像を理解しましょう。
ゼロトラストとは?いつから普及したか
ゼロトラストはネットワークの境界ではなく、ユーザーや各種資産を中心に防御網を組み立てるセキュリティの考え方です。
「社内ネットワークの内側は安全」とする従来の前提に依存せず、すべてのアクセスを都度検証する厳格なモデルに基づいています。
社内からのアクセスや会社支給の端末であっても無条件に信頼せず、どこから・どの端末でアクセスする場合でも利用者や端末の安全性を確認する点が特徴です。
この考え方は、リモートワークやBYOD(私物端末の業務利用)、クラウドサービスの普及により注目されるようになりました。
従来のように社内外の境界で防御するモデルでは対応しきれないケースが増えたことが背景にあります。
さらに、2020年にはNISTがゼロトラストに関するガイドラインを公表し、考え方の標準化が進みました。
日本国内でも、IT政策・情報セキュリティ対策を推進する公的機関であるIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が関連資料を公開しており、導入検討が広がっています。
ゼロトラスト要件・基本原則
ゼロトラストは、最小限の権限のみを付与し、すべてのアクセスのたびに厳密な検証を行う設計が基本です。
従来の境界型防御のように、一度の認証だけで継続的にアクセスを許可するのではなく、アクセスのたびに利用者や端末の状態を評価します。
具体的には、個別のデータにアクセスする直前に、利用者の属性と端末の安全性を組み合わせて確認します。
これは、社内ネットワークであっても、すでに侵害されている可能性を前提とするためです。
セキュリティの重心を、ネットワーク単位の防御から、守るべき個別のデータやクラウドサービスなどのリソースへ移行します。
導入時には、米国政府機関であるCISA(米国サイバーセキュリティ社会基盤安全保障庁)が提示する成熟度モデルが参考になります。
成熟度モデルについて、下表にまとめました。
区分 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
5つの柱 | 身元管理(Identity) | 利用者やIDが本人かどうかを確認し、認証・権限管理を行う |
端末(Devices) | パソコン・スマホ・サーバーなどの安全性を確認し、安全でない端末を制限する | |
ネットワーク(Networks) | 通信経路や接続先を制御し、不正な通信や不要な接続を防ぐ | |
アプリケーション・ワークロード(Applications・Workloads) | 業務アプリやシステム基盤へのアクセスを制御し、実行環境を保護する | |
データ(Data) | データの分類・保護・閲覧制御を行い、漏えいを防ぐ | |
横断的能力 | 可視化・分析(Visibility・Analytics) | 利用者・端末・通信・データの状況を見える化し、異常を分析する |
自動化・オーケストレーション(Automation・Orchestration) | 判定・制御・対応を自動で動かし、各対策を連携させる | |
ガバナンス(Governance) | 方針・ルール・責任分担を決め、全体を統制する |
5つの柱は「どこを守るか」を示し、横断的能力はそれらを連携・運用するための支援機能です。
このモデルが示す5つの柱を活用すれば、組織のセキュリティ水準を現状にあわせて段階的に高める道筋を具体化できます。
従来の境界型セキュリティとの違い
境界型セキュリティは、社内と社外のネットワーク境界線に強固な防御壁を設ける従来の仕組みです。
一方、ゼロトラストは境界の内側であっても暗黙の信頼を置かず、常に検証を求める点で根底の考え方が大きく異なります。
従来の境界型セキュリティとの主な違いは、下表のとおりです。
比較項目 | 境界型セキュリティ | ゼロトラスト |
|---|---|---|
何を守るか | ネットワーク全体を守る | ユーザー・端末・データなど、リソース単位で守る |
何を信頼するか | 社内などの内部は信頼する前提で考える | 内部・外部を問わず、最初から信頼せずに確認する |
どう制御するか | 入り口(境界)での認証を中心にアクセスを制御する | アクセスのたびに都度評価して制御する |
境界型セキュリティは、ファイアウォールなどのネットワーク機器を中心とした発想で、長年企業システムを保護してきました。
一方、ゼロトラストはネットワーク層だけでなく、ユーザー・端末・データ資産を中心にきめ細かな制御をかける点が特徴です。
EDRとはなにか

本章では、エンドポイントを狙う巧妙なサイバー脅威への対策として、EDRの具体的な機能や運用上の役割を解説します。
導入の必要性を社内で説明できるよう、検知から復旧に至るまでの技術的な対応プロセスを正しく把握しておきましょう。
EDRの基本的な仕組み
EDRは、サーバーやパソコンなどのエンドポイント上で、詳細な挙動データを継続的に収集するソリューションです。
不審なプロセスの実行や異常なネットワーク活動などの振る舞いをサーバー側に保持し、脅威の追跡に使います。
EDRの主な機能について、下表にまとめました。
項目 | 概要 |
|---|---|
データ収集 | エンドポイントから行動テレメトリを継続的に収集する |
脅威検知 | 未知のマルウェアや攻撃者の潜伏兆候をリアルタイムで検出する |
可視化 | 関連するアラートをインシデント単位に整理して可視化する |
対応・復旧 | 端末分離や不正ファイルの停止、検疫を実行する |
近年のEDR運用では、自動調査や自動修復の機能を組み合わせることで、脅威の検知から調査・対応までの迅速化が図られています。
運用プロセスの一部を自動化すれば、担当者が不在になりやすい深夜や休日でも一定の初期対応が可能となり、被害拡大の抑制が期待できます。
導入時には、各端末の操作履歴や稼働状況といったデータを遠隔で継続的に取得する行動テレメトリについて、対象範囲や保存期間をあらかじめ定めておきましょう。
EDR・EPPの違い
EPP(Endpoint Protection Platform)は、ウイルス対策ソフトなどを用いて、マルウェアの侵入を水際で防ぐ役割を担うエンドポイント保護プラットフォームです。
一方、EDRは、攻撃者に侵入された後の不審な挙動検知・インシデント調査・事後対応に特化した強みを持つツールです。
実務の現場では、EPPかEDRかの二択ではなく、予防と事後対応を切り分けて両者を補完的に使う設計が現実的でしょう。
既知のシグネチャで防げる一般的な脅威はEPPで弾き落とし、防御網をすり抜けた高度な未知の攻撃をEDRで確実に対処します。
ゼロトラストにおけるエンドポイントの重要性
本章では、ゼロトラストにおけるエンドポイントの重要性について解説します。
ゼロトラストアーキテクチャの構想を現実の環境で機能させるうえで、エンドポイントの厳格な管理は欠かせません。
情報漏えいを防ぎ事業継続性を高めるために、あらゆる端末を可視化してセキュリティ制御下へ置く全体設計を描きましょう。
ゼロトラスト環境下でのエンドポイントの位置づけ
ゼロトラスト環境において、エンドポイントは単なる業務用の情報端末という扱いにとどまりません。
重要な社内システムや機密データへのアクセス可否を動的に判断するための重要な評価対象として扱われます。
厳格な認証と認可の前提として、ユーザー自身の身元確認だけでなく、利用端末の健全性や設定状態の評価が可能です。
クラウド移行やBYODの急速な拡大により、エンドポイントの状態把握なしでは適切なアクセス制御がきわめて困難になります。
ユーザーのID管理を強化しても、端末が乗っ取られてマルウェアに感染すると、正規ユーザーとして不正な操作が行われ、情報漏えいにつながるおそれがあります。
侵入を前提とした多層防御の必要性
ゼロトラストは、ネットワーク内部が何らかの形で侵害されている可能性を常に前提とする厳しいセキュリティ思想です。
不正アクセスの完全な防止と万が一の被害局所化を両立させるために、単一の防壁に頼らない多層的な防御網を構築します。
高度な標的型攻撃による侵入を完璧に防げない前提に立つと、検知から封じ込め、復旧までを含めた包括的な対策が不可欠です。
多層防御の構築には、ID基盤・端末管理・ネットワーク制御などの各要素を独立させず、緊密に連動させることが重要です。
製品間でAPI(異なるシステムやソフトウェア同士をつなぎ、機能やデータを連携させる仕組み)を介したデータ連携を深めることで、脅威の検知精度やセキュリティチームの対応スピードの向上につながります。
ゼロトラストセキュリティにおけるEDRの役割
EDRは、ゼロトラストアーキテクチャでとくに重視される、エンドポイント環境の可視化を担う主要コンポーネントです。
侵害された後の不審な挙動を的確に検知し、膨大なアラートをインシデント単位にまとめて可視化する重要な機能を提供します。
端末上に点在するアラート群を攻撃のタイムラインとして線で結びつけるため、事後対応の精度とスピードが格段に上がるでしょう。
EDRの脅威データは、APIやSIEM(Security Information and Event Management)といったログ統合管理システムとの連携を通じ、ほかの製品と接続しやすい点が特徴です。
そのため、エンドポイントで得られた詳細な振る舞いを、ゼロトラスト全体のセキュリティの自動化や統合管理へ活用できます。
EDRは、エンドポイント上の不正な挙動をいち早く捕らえ、組織全体の防御力を底上げする実務上の要として機能するセキュリティソリューションです。
段階的なゼロトラスト導入に向けた流れ

稼働中の業務システムを長期間止めずにセキュリティモデルをスムーズに移行するため、次の順序で計画的に進めましょう。
- 現状把握と課題の明確化
- 実装範囲(成熟度モデル活用)の決定
- 優先順位に基づいたコンポーネントの導入
- 定期的な成熟度評価とポリシーの見直し
多要素認証の導入やEDRによるエンドポイント可視化など、セキュリティ効果が高く運用しやすい部分から着手してください。
EDR製品を選定するポイント
本章では、多様なEDR製品から自社のセキュリティ課題を解決するツールを選ぶために、確認すべき機能要件を体系的に整理します。
インシデント対応のプロセスを最適化できるソリューションを見つけて、複数製品の比較評価を慎重に進めましょう。
未知の脅威に対する検知精度の高さ
製品選定では既知のウイルスシグネチャによる判定だけでなく、高度な行動分析で未知の脅威を検知できるかを入念に確認します。
パターンマッチング技術に依存しない振る舞い検知や機械学習の性能が、エンドポイント保護の要として機能するためです。
製品比較では単純な検知率だけでなく、高精度なアラートによって運用チームの調査負荷を下げられるかどうかも確認しましょう。
日常的な業務アプリでの誤検知が多すぎると運用担当者の確認作業が増大し、真に危険な脅威を見逃す最大の原因になりかねないため、注意が必要です。
インシデント発生時の自動隔離と復旧機能
インシデント対応では、感染端末のネットワーク分離や不審ファイルの検疫などを即時実行できる機能がきわめて重要です。
EDR製品選定時は、次の要素をチェックしましょう。
項目 | 概要 |
|---|---|
自動修復機能 | ファイル検疫・サービス停止・タスク削除などに対応しているか |
運用の柔軟性 | 完全自動だけでなく、管理者承認などの運用方法を選べるか |
リカバリ機能 | 修復アクションの取り消しや状態復帰に対応しているか |
製品選定では検知機能だけでなく、封じ込めから通常業務への復旧に至る総合的な実行力を見極めなければ、運用負荷が残ります。
インシデントの運用要件や担当者のスキルレベルにあわせ、最適な自動化レベルを設定できる柔軟なEDR製品を選定してください。
既存のセキュリティ対策や別システムとの連携性
EDRの選定では、既存の端末管理基盤や運用ツールといかにスムーズに統合できるかが重要な評価基準です。
APIでデータ取得やインシデント応答を自動化できる製品は、既存のセキュリティ運用への組み込みやすさが格段に優れています。
ゼロトラストを組織で成立させるには、単体の検知性能だけを見ていてはシステム全体の相乗効果を引き出せません。
稼働中の既存セキュリティツール群と、新しく導入するEDRがどのような形でデータを連携できるかを事前に整理しておきましょう。
自社リソースにあわせた運用体制の構築のしやすさ
EDRは導入して終わりではなく、アラートの優先度付け・ログ調査・端末の封じ込め作業を継続的に回せる運用体制が必要です。
AIによる自動調査や自動修復の機能を活用すれば、少人数の運用チームにおける日常的な作業負荷の軽減に直結します。
自社の人員数・担当者のスキル・監視可能な時間帯にあわない製品を選ぶと、高度な検知能力を実務で活かしきれません。
トライアル期間中にアラート確認から実際の脅威対処に至る一連の運用フローを、自社の担当者が試して適合性を判断することが大切です。
運用体制の構築とSOC・MDRの活用
SOC(Security Operation Center)は、EDRや関連ツール群を24時間体制で継続監視し、高度な脅威分析とインシデント対応判断を専門的に担う中核機能です。
SOC・MDRについて、下表にわかりやすく整理しました。
項目 | 概要 | 特徴 |
|---|---|---|
SOC | セキュリティ監視・分析・検知・インシデント対応を担う運用体制・専門組織 | 自社・委託を含む監視運用の中核機能 |
MDR | 脅威ハンティング・監視・検知・迅速な対応を、人と技術を組み合わせて提供するマネージド型のセキュリティサービス | 外部の専門チームが監視と対応を代行するサービス形態 |
自社での24時間運用が難しい場合は、SOCやMDRを契約してゼロトラスト運用を強固に補強するアプローチが現実的です。
EDR選定では、ライセンス費用以外にMDRの運用費用も含め、中長期的なセキュリティ予算を確保しておきましょう。
まとめ|ゼロトラスト+EDRでセキュアな環境を実現しよう

ネットワークの内外を問わず、境界型防御のみに頼る従来のセキュリティ対策は、現代のビジネスでは通用しません。
そこで、利用者の属性や端末の状態、アクセス先のリソースを、その都度厳格に評価する体制を整えるのが重要です。
組織的にこの仕組みを定着させるには、端末の調達からセキュリティ監視までを一括で支援する企業の活用が欠かせません。
なかでも、コネクシオが提供するEDRサービス「セキュアソナーby トレンドマイクロ」は、ゼロトラスト環境の構築に不可欠な可視化と制御を強力に支えます。
コネクシオは、端末のキッティングから運用後のサポートまでをワンストップで行い、企業の課題を多角的に解決します。
セキュアソナーとあわせて専門的な運用支援を導入し、ゼロトラストの土台作りから運用の最適化までを段階的に進めましょう。















